たけのこの掘り方で美味しさが変わる
龍神村では、毎年、たけのこの季節になると収穫しているわけですが、たけのこの収穫期間は大体3月下旬~4月中旬までの2週間のみ、収穫の時間は決まって早朝です。
1年のうちにわずか2週間しかない収穫時期に美味しいたけのこを収穫するには、たけのこの美味しさを損なわないような掘り方をマスターしなければなりません。
万が一、たけのこの掘り方を誤ると、せっかくの美味しさがあっという間に損なわれてしまいます。
たかが掘り方、されど掘り方です。
たけのこの掘り方ひとつで、美味しさは天と地ほどの差が生じてしまいます。
社員のたけのこの掘り方に思わず感動!?
今年のたけのこ収穫は、大変に感動したことがありました。
当社は朝8時からの業務なのですが、男性の社員は農業をするので早い社員は朝6時くらいに自主的に仕事を考えて出社してきます。
今の時期はまず竹林に行ってたけのこを掘る作業をします。
それを田辺市内にある弊社の工場に運び洗って、間髪入れずにアク抜きの作業をします。
先週末に田辺の加工場が忙しかったので2~3日わたし自身で洗って選別しているとまず気づいたのが、昨年よりさらに、これ以上は無理と思うくらい、たけのこをきれいに掘っているではないですか。
昨年もほとんど完璧に近かったのですが、今年のたけのこの掘り方はさらに上です。
今年たけのこを掘っている2人は入社7年目と9年目になります。
最初は私が一緒に行って掘り方を教えていたのですが、簡単にたけのこを掘るといっても大変な仕事です。
まず弊社の竹やぶは斜面がきつくて土もなかなか固めです。
山を登るだけでも一苦労、さらに、地面の小さな盛り上がり(地中のたけのこ)を見つけるのは至難の業です。
幸運にもたけのこが見つかったとしても、たけのこを根っこの部分まできれいに掘り返すのは本当に大変で、最初からきれいにはとても無理です。
ここ3~4年は彼らだけで私は日曜日の朝に掘るぐらいだったのですが、今年彼らが掘ったたけのこを見るともう本当に驚きました。
もう私が勝てないなと思うぐらいのレベルです。
最初のころは彼らが掘るとたけのこが傷んでいたため、湯がくと煮崩れしたり、人様に贈れるものがなかなかなかったのですが、もう私が掘り方で教えることは何もないと、選別しながら感動しました。
たけのこの掘り方ひとつで味が変わる!!
実は深い話をするとたけのこも掘り方ひとつで味が変わるのです。
たけのこの掘り方のポイントはふたつあります。
ひとつ目のポイントは、たけのこに朝日を当てないことです。
たけのこに掘られたことを気づかせないことがポイントです。言い換えると、掘っているあいだに、たけのこにストレスを与えないということです。
一言で言うのは簡単なのですが、実際には途中掘るのに疲れたり竹の根がからんでいたりすると無理な力で引き抜いたり、左右に揺らしてしまいますが、このような掘り方は本当はダメなのです。
ふたつ目のポイントは、たけのこに傷をつけないように、根っこまで綺麗に掘り返すことです。
この時期は、地元の農家直売所などでもたけのこをよく見かけますが、前日の夕方からのものなども多いですし、並べているものを見ると乾燥したり根がついていないものなども多いです。
たけのこは掘られたのに気づいた瞬間から固くなったり、アクが強くなったりするので、どうしても味に影響が出ます。
数年前に私の親しい和歌山市の料亭の大将のお店に、美味しんぼのスタッフの方たちが打ち上げで来られた際、大将に頼まれて朝5:00から掘ったたけのこに光を当てずに、その山を流れる近くの谷川で新聞紙を濡らしてくるんで立ったままの形で午前8:00すぎぐらいに厨房に届けたことがありました。
そこまでやると本当に味の違いは明確です。
まったくアクを感じさせず、たけのこの繊細な香りが残る本当に美味しいものになります。
私たちが育てて掘ったたけのこは、たけのこのアクが苦手で食べられない方でも美味しくパクパク食べると好評をいただいています。
農業のコツは一朝一夕では身につかない!!
農業やものづくりは少し経験したぐらいや1~2年ではなかなかわかるものではなく、やり続けることによって1つ1つ、また1つと理解できていくものなのです。
私自身しいたけ作りなどもやっておりますが、仕事のやり方が神経質なところがあるのであまり他人と仕事ができないタイプなので、しいたけやなめこ作りは2月~3月末までの間ほとんど一人でやっています。
人と一緒にやると菌を入れて埋める並べ方、封ろうの仕上がりなど気になってついうるさく言ってしまいます。なので若い社員たちには最初に細かいことをうるさく言うのですが、ある段階で社員に全て預けます。
たけのこ堀りも同様です。
こんな私のやり方に理解を示しついてきてくれる社員が掘った、丁寧で綺麗な仕事のたけのこを見て、こんな社員達と仕事ができ本当に楽しいと思います。
農業も梅作りもこれから彼らが中心となり、品質の向上やより良い商品作りのため、一歩一歩少しずつ当社一丸となって歩んでいきたいと思っております。これからもどうぞよろしくお願い致します。
(この記事は2017年に執筆掲載しました)