老いも若きも70号|食品に対する消費者の考え方

老いも若きも70号|食品に対する消費者の考え方

老いも若きも70号|食品に対する消費者の考え方

御無沙汰しています。

 

「老いも若きもの最近は?」と注文をいただいたお客様から言われることがあるので、親父が最近原稿を書かないので、今回は私が書くことにいたします。

 

龍神梅もここ2~3年親父が私にどんどん任せきりになって来て、何を相談しても「善夫の好きにしろ」としか言わなくなりました。

 

これは年をとってそうなったのか、息子を信頼してくれているからなのか、本当にいい意味で力みが抜け私たちを見守ってくれていると言った感じです。

 

 

食品業界の変化

 

最近の食品業界も色々な変化がものすごく早いスピードで移り変わっているように思います。

 

一時食品の偽装がよく新聞やニュースで報道されていましたが、今の食品メーカーは本当に大変です。

 

何年か前に中国地方のタケノコの水煮を製造しているメーカーが中国産のタケノコを国産だと偽ったとされTVのインタビューに答えていましたが、その時その会社の社長は「知らなかった」と言ってマスコミに徹底的に叩かれていました。
本当に知っていたか知らなかったかは本人でないと分かりませんが、前は最終加工地でよかったものが、原材料、原産地に変わったのもごく数年前のことです。

 

こんなニュースが流れると、うちの表示は大丈夫か?と思い2年前にラベルを持って保健所に。

 

すると色々な不適切な表示があるわあるわ・・・例えば、『無農薬有機栽培』はJASをやめたのでもちろんダメ。(これはうちが一切の農薬を使用していないにもかかわらずです)

 

それに、『一切』と言う表現は不適切と言われ、当時おふくろがエキスなどに貼っていた『いのちのもと』と言ったものも科学的根拠がないと言われました。

 

うちの商品に使っている砂糖は奄美大島喜界島のさとうきびのみを使っていますが、これに『ミネラル豊富』は何と比較してミネラルが多いのか科学的に証明出来るものを添付しなければと言われ、『天然』や『自然』も不適切と言われ、ラベルの変更を余儀なくされました。

 

前のラベルの時に近畿の農政局と相談していたにもかかわらずです。

 

こう言った経緯で商品の中身や製造方法は変わっていないのに、前に使っていたラベルがたくさんあるにもかかわらず、20年の11月より新しいラベルとなった訳です。

 

これだけのスピードで食品衛生法などが変わるのにメーカーには何の通達もありません。

 

食品の表示などの変更をどうやって調べていいのか聞くと、「月一回東京保健所のホームページをチェックしたらいいよ」とのこと。

 

もしそれで一ヶ月後に変わっていれば、また変更しなくてはいけないとのことです。

 

うーん。大変です。

 

ニュースでやっていたタケノコ屋さんは表示の方法が変更していたのをホームページでチェックして即座に理解していたのでしょうか?私どもの会社も知らずそのまま続けていたら偽装などと言われたのでしょうか?確信犯的にする業者は別として、知らない業者さんもたくさんあると思います。

 

それに最近の消費者の方で、メーカーに直接質問やクレームなど言っていただければいいのに、少し何かあれば保健所や消費者センターに持ち込んだりする方もいらっしゃいます。

 

去年は保健所から二件連絡がありました。

 

 

ラベルの消費期限が中のビンと外箱で違う

 

お客様は「詰め替えしているのではないか」と言ったそうです。

 

神奈川県の保健所から連絡があって、その日のロッドの行き先全ての調査、当社の取引先の全てを開示しろとのこと。

 

その後地元の保健所からも連絡があり、原因等のレポートなどを提出しました。

 

原因を調べると、消費期限の所に製造年月日を打ち込んだという人為的なミスでした。

 

 

愛知県の保健所から、お客様が「この梅は農薬の味がする」

 

この担当の方は非常に食品に詳しい方で、「個人的には昔なつかしい梅でこんないい梅があったんですね」とまず褒められました。

 

しかし「お客様から言われた以上、梅、しそともに農薬を分析させてもらってもいいですか?」と言われたので、「ぜひお願いします」と申し上げました。

 

数日後その担当の方からお電話をいただきまして、「27品目の農薬検査を0.1ppmで検索しましたが、梅、しそともに全く検出されませんでした。

 

見事です」と言われ「一般的にはこういった検査結果は報告だけですが、今後の商売にお役立て下さい」と分析表をいただきました。

 

今の消費者の方々には本当の味を知らない方もたくさんいらっしゃいますが、現代の食品業界において、あまりに極端な安全性や衛生管理を求めると、小さいメーカーや手作りでやっているメーカーなどは本当に経営が出来なくなります。

 

あくまでも私どもの食品は農産物の加工なので、個体差、畑によって酸度やBrix(糖度)全てが違うのです。

 

メーカーである私たちにも責任がありますが、消費者の方々の「食品とは?」と言った知識も少し持っていただかなくては、これから先本当によい食品を作るメーカーが少なくなって来るように思います。

 

私が感じるのは、この何年かの間で食品製造メーカーに対しての消費者の意識はどんどん変わって来ているように思います。

 

昔は食べ物を捨てる事がもったいないと教えられ、私もちゃぶ台にこぼしたご飯は「もったいない」と祖父母に言われて拾って食べたものです。

 

現在はもったいない前に消費期限が少しでも過ぎたら捨てる・・・廃棄処分されていきます。

 

少し前に有名な伊勢の餅屋さんが、消費期限の切れた餅を練り直し販売していた事があかるみになり問題になりました。

 

これはひと昔前なら普通の事だったのです。

 

しかし、今では一日でも期限が過ぎた物は処分しなくてはなりません。

 

そうする事によって大量のゴミが出るにもかかわらずです。私はこの餅屋さんが正しいとも思いませんが、もう少し他に方法がなかったのでしょうか。

 

 

消費者の方が安全や衛生、見た目を求めれば求める程、食品は添加物や農薬が必要

 

ここで言う安全は、私たちの考える安全とは異なるものなのです。

 

少し前頃から、梅肉エキスをもう少し飲みやすいものにしようと考えていまして、これはお客様からのご要望にもたくさんありましたので色々模索していました。

 

その候補としては、カプセル、錠剤、チューブ式といったものを検討したのですが、カプセルについては、カプセルの材質が調べれば調べる程色んな物がありすぎて、どれがいい物なのか悪い物なのか判断に苦しむので却下。

 

一番いいのはチューブ式と考えるとチューブ容器のロッドが大きすぎるのとシール機の値段が高過ぎて今の所保留。

 

最後に錠剤にしようと考え何社かお話を伺ってみました。

 

まず私どもがお願いしたのは、原材料は自然の物で国産、できれば有機の物でとお願いしたら、一社以外は無理との返事。

 

残りの一社は出来る限り協力するので、とりあえず梅肉エキスのサンプルをとのこと。

 

何度も何度も試作品を作っていただいて、色々な事が分かって来ました。

 

まずは山芋粉でやってもらったら、軟らか過ぎるか水分が少なかったらカチカチになりすぎるかのどちらかなのと、コストがかかり過ぎて販売するには価格が問題となりました。

 

次は上新粉とてんさい糖の繊維を使ってみました。

 

何度も何度もそれぞれの配合を変えてやっと完成しました。

 

今回エキスの丸剤を作る過程において大変勉強になりました。

 

まず試作の段階で言われたのは、「龍神さんのエキスは丸剤にするのは非常に大変です」と。

 

なぜならうちのエキスは他のメーカーさんに比べBrixが高いので固まりにくいのと、ロッドごとにPHやBrixが違ったらまた混ぜ合わせの%を変更しなくてはならないと。

 

ここで疑問に思ったのは、「ではなぜ他のメーカーさんはエキスのロッドが変わってもPHやBrixも同じなんだろう?」うちの場合、自家農園と直営農園と車で30分離れているだけで、気温の違いや土壌の違い、木の年数などで農産物は味も見た目も変わるのに、いつ製造しても全く同じ味。

 

PHやBrixも同じになる事が「本当かな?」と思ってしまいました。

 

このメーカーさんは、ここまで大変なエキスの丸剤の試作品を何度も何度も作って下さり、やっと私どもとメーカーさんの納得出来る試作品が出来上がりました。

 

使っている原材料は梅肉エキス50%上新粉45%てんさい糖5%です。天然の原料100%で完成させる事が出来ました。

 

この梅肉エキスの丸剤を近日中に販売するつもりです。

 

このエキスの丸剤を作る過程で「他のメーカーはなぜ?」と言う疑問がたくさん出てきました。

 

その事を先日、京都のとても良いドレッシングやマヨネーズを製造している会社の社長さんとお話をしていたら、「最近お客さんから栄養成分や分析結果の表示が無いから不親切だ」とお叱りを受けたと聞きました。

 

社長さんは一応目安の成分表示はした上で、「多少の誤差が出てしまうので、その範囲を超えたらまずいので表示をラベルには貼れない」と答えられたそうです。

 

確かに最近はお医者さんの食事制限などで栄養成分の表示が必要なのも分かります。

 

でも、それが1gでも違ったら嘘の表示、偽装だとなるのです。

 

成分を表示するのが親切なのかもしれませんが、もうこうなってくると食品ではなく工業製品です。

 

トヨタの車を作る下請のビスの長さにバラつきがあればそれはまずいでしょうが、食品(農産物等)が全部同じ事の方がおかしいと消費者の方々にも少し考えていただけたらと思います。

 

今回このようなお話を書かせていただいたのは、私どもが目指す食品の安心や安全と、現在多数の消費者が求める食品の安心、安全とが、ここ数年特にずれて来ているように強く思うからです。

 

私たちは本当の意味での食品の安全を考え、今後も消費者の方々と共にいい商品を育てていきたいと考えています。

 

私どもの会社では、旧工場ではこれ以上の衛生管理が難しくなってくる為、昨年六月からISO22000に対応できる新工場をオープンしています。この工場の二階には自家農園や龍神の季節の食材を使った料理を提供するレストランがあります。

 

このレストランは、うちの製品を買っていただいているお客様のみ使えてもちろん無料です。(要予約。時期、日時によってお断りする場合もあります。)ここでは、調味料のほとんどが手作りでキャリーオーバーでも無添加の物を使っています。

 

例えばドレッシングに使う醤油なども無添加です。もし興味がある方は、お気軽にお電話等お問い合わせ下さい。

 

龍神梅では、「食とは?」を皆様と一緒に考えていけたらと思っておりますので、ぜひご利用下さい。

 

 

平成22年4月27日

 

寒川 善夫

 

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