老いも若きも72号|食品と漂白剤の関係
今年も梅の漬け込みも終わり一段落です。今年は全体から見れば豊作ですが、畑によって全く収穫量が変わります。
梅は、花が満開になる前後の気候が穏やかで蜂が活動しないと、交配がうまくいかずに実りが悪くなります。
この満開の時期というのは、畑の場所によってかなり差があり、うちの場合一番早い所と遅い所で約一ヶ月位変わるので、どうしてもたくさんの実をつけている畑と少ない畑と差ができてしまうのです。
それに今年のように雨が多いと、スス(地元ではこう呼びます)といって、梅の実に本当にススのような、黒っぽい物が薄く付くのです。
これは、うちのように一昼夜水にさらすときれいに取れるので、さほど問題はない事なのですが、一般的にはススが付かないように何回も農薬をまきます。
それでも、今年のように雨が多い年は、農薬が効かない場合があります。
漂白剤に漬込む!?
そういった時、一般的な農家さんや梅屋さんはどうするかというと、本当に驚きですが、出荷や漬込み前に何と漂白剤に浸けるのです。
信じられないかもしれませんが、農家さんや梅屋さんは、これを普通に一つの工程としてやっているのです。
これに対して尋ねても、みんなやっているし、漂白剤(次亜鉛酸ナトリウム)に浸けるのと浸けないのでは、JAや市場の引取値が明らかに違うらしいのです。
これは、地元の農家さんや梅屋さんなら誰でも知っている事ですが、加工された物に表示があるわけでもなく、一般消費者は誰もこの事を知らずに食べているのです。
前にも、「老いも若きも」に書いた事がありますが、今の食品は本当に工業製品に近くなって来ていると思います。
これに対しても、きれいな商品の方が高く売れるというだけで、誰も疑問を持たずに作業しているのです。
梅を作っている農家の方が、自分達が食べる物は漂白していないと言っていました。
愕然とします。
次亜鉛酸ナトリウムとは何かというと、みなさんご存知のカビキラーなどの主成分です。あの液に浸けてピカピカにして出荷しているのです。
こんな物を毎日食べていたら、梅干が体にいいどころか、体に悪いのではないかと思います。
うちの直営農場を管理してくれている佐野君という若い子がいます。その佐野君は、元々梅の仲買業者さんをやっていました。
今でもその会社はありますし、社員もいます。
だから、農家さんや梅屋さんにも出入りがあるのですが、いつも「梅干は龍神梅以外は本当に食べられない。他の梅は口にする事が出来ない」と言ってくれます。
これは、私としては非常に嬉しい事なのですが、少し複雑な気持ちになります。
一般の消費者は梅は健康食といったイメージがありますが、果たしてこういった梅が健康に良いのかどうか、すごく疑問に感じます。
私にとって梅干は、毎日食べますし特に夏場は5個以上食べる時もあります。
これが、カビキラーやハイターで漂白されている物だったらと考えただけで気分が悪くなります。
しかし、一般的な梅の多くはそういった工程を経て作られているのです。
この次亜塩素酸ナトリウムや苛性ソーダなどの漂白剤は、梅だけに使っているのではなく、スーパーの野菜やお刺身の横に添えられているけんなども、陳列する前の漂白処理に使っているお店も少なくありません。
使っている側は、常にきれいな商品でないと売れないからと言いますが、消費者がきれいを求め続けると、食品はどんどん加工の段階や出荷前にこういった処理がされていくのです。
本当に怖い話です。
自分達が安心して食べられる食品をお客様に
食品の作り手側として、自分が食べられない物や、自分の家族に食べさせられない物を作って販売するといった行為を不思議に思ってしまいます。
しかし、私どものように、無農薬で農作物を作ると梅干でも、最後に樽やパックに詰める時、B級品やつぶれなどがたくさん出ますし、一樽一樽で形や黒い斑点の付いた物など、不揃いの物にどうしてもなってしまいます。
やはり、時々お客様から今回の樽は硬い物が多いなどお叱りを受ける事もあります。
こちらも出来る限り品質の近い物を入れるのですが、どうしても畑の場所や出来具合によって、統一性がないのも事実です。
梅干も加工品であり、元は青梅として木についている実なのです。
これを、同じ統一規格にもっていくには、数回~数十回の農薬や、挙句の果てには収穫してからの漂白といった事になっていくのです。
どうか、消費者のみなさんには、農作物というのは、土から出来る物で一つ一つは畑や気候など、色々な要素で全く同じ物はないという事を、ご理解していただけたらと考えています。
私どものような作り手は、消費者のみなさんのご理解があって、初めて良い食品を作る事が出来るのです。
最近放射能に対しての質問が多くなっています
今回の東日本大震災によって、日本の食品の汚染が本当に心配されておりますし、消費者の方々が不安になるのも当然の事だと思います。
まず私どもの対応としては、皆様の不安を取り除く為に9月以降、梅干を干す干し場の床と地上1mでの放射能測定と、工場の敷地地上0mと1mでの測定を毎日欠かさず行っています。
今の所自然界にあると言われる数値意外は反応した事がございません。
塩は沖縄のシママースを使用していますが、今年の塩については、汲み上げた時の海水及び製品からは、震災以前と全く数値の変わらない物と確認していただいております。
現在も沖縄の海水(その会社が汲み上げている物)で定期検査を実施しているとの事ですが、今現在海水が震災以前と同じと言った返答と分析結果をいただいております。
今年の新梅干についてですが、もう干し上がった製品に関しては一桶ずつ(全てのタンク)順番に検査機関に分析を依頼しております。
今現在の国の基準値ではなく、震災以前と全く変わらない数値となっていますのでご安心下さい。
分析結果等はいつでも公表いたしますので、必要な方はお問合せ下さい。
コピー等送らせていただきます。
それから製造年月日の事での問合せも多いのですが、製品の製造年月日は最終お客様に渡る容器に入れた時点と言う事になります。
ではなぜ3年梅干などが存在するのかと言うと、製造メーカーでは在庫をまとめた量で一定の環境(冷暗所等)で保存しています。
それを出荷前にチェックをして、容器に詰めて出荷となります。この時点で製品に変化のない事を確認し詰替えとなるので、そこからは消費者の方々の管理となるので賞味期限等が付く事になります。
地元大手の梅研究室の担当者に「龍神梅さんは製品に科学的処理をされているの?」と聞かれ逆に「どうしてですか?」と質問したところ、一般的な食品は一般生菌、真菌、大腸菌がどれだけ以下と言った表示になるらしいのですが、幸い当社の製品からは全く検出されなかったらしいのです。
私から考えると、本来梅干や梅肉エキスと言った物はそのぐらい殺菌力が強く、体内に入るとクエン酸サイクルによってアルカリに変えると言った作用が働いて健康に役立つ物なのですが、最近は食べやすいからか低塩ブームでどんどん梅本来の酸味や塩分が抜かれて、その効果が疑問視されるようになっています。
昔から梅は三毒を絶つと言われ薬としても扱われるぐらい人間の体にとって有効な物だったのです。
その分析結果を聞いて「やはり昔ながらの漬け方でないと、梅本来の本当にいい部分が損なわれていくなあ・・・。
やはり梅干は口に入れた瞬間すっぱさを感じ、唾液がじゅわっと出てこないと」、と思いながら今日も朝から梅干2個食べて頑張ります。
平成23年10月17日
寒川 善夫