龍神梅を20年ぶりに値上げした理由
2017年2月に龍神梅をはじめとするすべての梅商品の値上げを実施させて頂きました。
お客様のことを考えると苦渋の決断ではありましたが、持続可能な農業を守るために社長のわたしが決断させて頂きました。
以下メッセージは、2016年10月に、お客様に宛てた手紙の全文です。
・無農薬栽培を続けるため
・無添加食品を作り続けるため
私たち自身がこの時の気持ちを忘れないためにここに掲載することにしました。
龍神梅をご愛用の皆さまへ
いつも龍神梅をご愛顧いただきまして、誠にありがとうございます。
龍神村は朝夕の冷え込みが厳しくなって、ようやく冬の訪れを感じられるようになりました。
今年は申年です。昔から申年の梅は不作で貴重だと言われるのですが、今年も例に漏れず不作でした。
龍神村の農家さんで、昨年の収穫量の十分の一だった方も居るくらいで、弊社でも漬け込みした梅干は昨年の半分以下でした。
本当に不思議なのですが、自社の畑も申年にたくさん実を付けた年は記憶にありません。
さて、これだけが原因ではないのですが、お客様に価格改定のお願いをしなくてはならなくなりました。
大きな理由としては、紫蘇の収穫方法と使っている塩の変更により、梅干作りのコストが高くなったことです。
紫蘇の収穫は8年前までは機械で刈り取っていましたが、現在は葉っぱを一枚一枚手摘みで収穫しています。(灰汁抜きを手しぼりに変えたのは5年前です。)
これにより同じ量を収穫するのに人件費が以前の6倍になりました。
なぜこういったやり方に変えたのかと言いますと、機械で収穫すると、えぐみの原因となる茎がついてくるからです。
機械で摘んで揉んだ紫蘇と、一枚一枚手摘みして揉んだ紫蘇の香りを比べると、その差は歴然です。
手摘みのものと比べると茎が入っている葉の方は少し青臭いと言うか、えぐみが感じられます。これを比べた時に迷いなく手摘みに切り替えました。
このお話のついでに紫蘇作りの大変さをお話しします。
以前からお伝えしている様に農家さんに無農薬の紫蘇作りをお願いしても、どの農家さんからも作っていただけると返事をもらえたことはありません。
それだけ無農薬の紫蘇作りは大変なのです。
先日、害虫をおびき寄せる外灯の会社の方が、「出身地が大葉の産地だが、大葉の生産農家は年に二度の健康診断が義務付けられているほど農薬の散布がひどいので、大葉は絶対に食べない」とおっしゃっていました。
一般的にこういった話をしてもぴんと来ないかもしれませんが、梅干業界でも、有機と謳っている梅干なのに紫蘇は有機ではない普通栽培のものを使っている商品が多くあります。
JAS有機の認証制度では5%の普通栽培の原料を混ぜることができます。
悪質な業者は、5%の上限関係なく普通栽培の梅や紫蘇を混ぜて、無農薬表示で梅干を販売している例もあります。
JAS有機やEUのエコサートの検査員の方に、書類の審査に重点を置くのではなく、ロット別に残留農薬検査をしたら、商品の安全性が増し、コストも安くつくので良いのではないかと意見しますが、私の意見が受け入れられることは絶対にありません。
悪質な業者の不正表示が横行している現状を鑑みると、「無農薬表示」に何の意味があるのかと思うことがあります。
龍神梅に無農薬の表示がないと言われることがありますが、全ての畑でJAS有機の認証を取得したら莫大な費用がかかるので、現在は、自社の畑と直営農場だけ取得しています。
あとの畑は取得していませんが、梅は全く同じ無農薬基準で栽培しています。
加えて、全てのロットを276項目の残留農薬検査にかけています。
創業以来一度も、弊社の梅干から残留農薬が検出されたことはありません。弊社が提供している龍神梅は完全無農薬の梅干しです。
お塩を一般的な岩塩からシママースに変更したのは、塩の袋に小石などが入っていて、衛生的に問題があったからです。
それにシママースで漬けると梅酢が早く出て、漬けた実が早く梅酢に浸かるので、低塩で漬けてもカビなどの心配が少なくなります。
また、シママースに変更して10年が経過しますが、梅酢の透明度が上がったことも理由の一つです。
梅酢に溶けるのが早いのは、この塩の結晶の表面積が非常に大きいことが関係していると思います。
ただ、岩塩と比べると価格が約6倍するので、漬け物塩としては高くつくところが問題でした。
この他にも、容器や資材の度重なる値上げもあり、20年以上にわたり価格を据え置いて参りましたが、今後も品質や安全性を維持するために価格を上げざるを得ない状況となりました。
どうかご理解ください。
さて、最近、梅に斑点がついており、あまりきれいじゃないと返品を希望される方がごく稀にいらっしゃいます。
梅の斑点や、あまりきれいに見えないのは、「無農薬で梅を育てていること」、「梅の斑点を漂泊する次亜塩素酸ナトリウム洗浄を行っていないこと」、この二点が大きな理由です。
梅干は、収穫した梅が、そのままお客様の口に入る食品です。
弊社は本当に自然のままの梅の素晴らしさを引き出すのに、最高の形で梅干し作りに取り組んでいると自負しております。
それと、梅干しなのになんで賞味期限が一年なのかなど、賞味期限の問題もお客様からよく聞かれます。
保健所などの指導を受けた際に(これも担当者によって違いますが)、あまり長くては、などと言われたことがあります。
最近は賞味期限が過ぎればメーカーに聞く方が増えていて、自分でにおいや見た目などで判断する人が少なくなってきたのかと心配します。
龍神梅は水や他のものが付着しなければ、何年でもおいしく食べることができます。
製品になった時点から大腸菌、一般生菌、真菌という、いわゆる酵母が存在せず、何年でも日持ちがする、昔から日本人が使っていた優れた保存食です。
ですが、お客様の手に渡った時点で使用状況、保存環境は異なります。従いまして、賞味期限を過ぎたものに関しては、弊社では責任を負いかねますので、期限に関わらず、お客様の判断でお早めにお召し上がり下さい。
龍神梅は体内に入れば、クエン酸サイクルの働きがきちんと起こる本物の梅干です。
現在の梅干は調味するのに脱塩するので、食べても梅干としての効能があるのか疑問です。
食べるなら一般の梅でも白干梅を食べて、調味梅干しを食べないことをおすすめします。
農業において昔からのやり方を守るというのは非常に手間暇がかかります。
私どもは主に自家用で米作りもしておりますが、これも全く農薬も除草剤も使用していない無農薬栽培です。
お米も稲刈りしたあとは、現在はコンバインでもみにして乾燥機で乾かして保存するやり方が一般的ですが、昔と同じように竿に稲を掛け、天日で乾燥させています。
今でもこの風景は田舎では見かけますが、この乾燥のさせ方に何の違いがあるのかと言うと、乾燥機で乾かしたもみは撒いても芽が出ませんが、天日のものは芽が出て、来年の苗となるのです。
やはり毎年のものなので天日乾燥したものを食べたいですね。
こういったやり方と言うものを私どもはずっと続けて行きたいと考えて農業に取り組んでおります。
龍神梅がどういった農業や製品作りをしているか、機会があれば是非、見に来ていただきたいと思っております。
今後共お客様に喜んでいただける製品作りに努めて参ります。
どうぞ宜しくお願い致します。
2016年10月吉日
龍神自然食品センター
代表取締役社長 寒川善夫