煎り酒の作り方と使い方・無添加の煎り酒
龍神梅の煎り酒がどのような試行錯誤を経て誕生したのかを紹介します。
煎り酒とは、梅の香りと酸味や塩分で非常にあっさりとした上品な調味料です。
醤油が高級品で一般的に浸透する江戸時代までは、庶民の一般的な調味料として広く使われていたのですが、醤油が普及するに従い次第に利用されなくなっていったそうです。
この歴史ある調味料を復活させたいと思い、色々な開発と研究を重ねました。
かくいう私も煎り酒を知ったのは開発に着手する少し前で、和歌山の岩出市で日本料理屋さんをやっている私の友人が、ある日食事に行った時、鰯の梅煮が出た時の会話で、
大将 「最近は本当に日本料理に使える梅干が少なくなってきたんですよ」
私 「えっ?どう言う事ですか?」
大将 「いやぁ・・・鰯を煮るのに何で梅干を入れるかと言うと、梅干の酸で鰯の骨がやわらかくなるんですよ。それに梅干を添えて出すんですが、うちで5時間ぐらい煮るんですが、 それでも一緒に煮た梅干にしっかり味が残ってるような梅干が少ないんです。寒川さんの 梅干は本当に日本料理に使える貴重な梅干ですよ」
と言われめちゃくちゃ嬉しかったです。
それと同時に驚いたのは、5時間煮た鰯の表面がまだ青魚の綺麗なままのうろこで光っていた事です。
私 「大将。何でこの鰯5時間も煮て綺麗なままなん?」と聞くと、
大将 「いや、下処理から丁寧にやると普通ですよ」
と、サラっと言われ、日本料理のすごさを垣間見た気がしたものです。
その後大将から、「寒川さんの梅なら美味しい煎り酒が作れますよ」と言って頂き、煎り酒の作り方や歴史を大将から教えてもらったのです。
煎り酒の作り方と誕生秘話
煎り酒の作り方を簡単に説明すると、基本は古酒(日本酒)に梅干を入れて煮切ってアルコールをとばした物で、梅の香りと酸味や塩分で非常にあっさりとした上品な調味料です。
鰹や昆布を入れるなど地方によって色々な方法があったみたいです。現在では、高級料亭などで、白身のお刺身のたれなどとして出しているお店もあるようです。
それに、調べてみると商品として販売している煎り酒もあったので、出来る限り取り寄せて味見をしてみました。
味見をしてガッカリ、、、ほとんどの商品は、だし醤油のような感じで煎り酒とは全く違った物でした。
中にはかなり本格的な煎り酒もありましたが、やはり大将の作った味にはまだまだでした。
こうして研究しているうちに、この歴史ある煎り酒を商品にしたいと思ったのと、日本料理の職人さんの味を出来るだけ忠実に再現したいと思い、開発と販売を決意したのです。
煎り酒の作り方と見本品は、大将にお願いして作ってもらいました。
その作り方と見本品をもとに、実際大将が厨房で作る味に非常に近い物である事を目標とし、龍神梅の工場で出来るか、賞味期限はどうなのか、といった事からスタートしました。
まず、試作で作った煎り酒を味見。これは大将に見てもらったのですが、味は合格でした。
大将はここまで近い物になると思っていなかったみたいです。
本当に難しい煎り酒の作り方
添加物を使わずに日持ちがするかどうかです。
煎り酒の賞味期限実験で、まず試作品を3ヶ月後に食べてみました。
わたしは「何か少し違うな」と思い、うちのスタッフ2名にも試食してもらったのですが、やはり、スタッフ2名共、変化に気が付きました。
だしに使っている鰹節の渋味が舌に残っておかしいのです。
渋みの原因は鰹節の酸化でした。ただし、酸化度合の数値は1年たっても問題のない範囲なのですが、大将の味からはかけ離れてしまいます。
人間の舌は、機械の数値よりはるかに正確です。この変化を受けて、このままでは販売出来ないとの判断を下し、しばらく開発が停滞しました。
ここで一般的には酸化防止剤を使います。表示ではビタミンC。これは、L-アスコルビン酸と言った物を使用します。
龍神梅は無添加主義を貫いていますので、この鰹節の酸化を添加物なしでどうするかという課題が浮上しました。
真っ先に取り組んだのは、酸化が遅い鰹節をと思い、鰹節を色々比較してみました。
地元和歌山も鰹の産地でいい鰹節があるのですが、酸化に圧倒的に強く味が上品かつ旨みがあるのは、文句無く波切節の血合いを除いた物でした。
この鰹節に負けない昆布をと思い、北海道折浜の天然真昆布を組み合わせました。昆布も乾燥や熟成の仕方で旨みが変わるのですが、この昆布は最高の旨さでした。
鰹節と昆布以外にも、本みりんも自分が納得する物を使うなどして煎り酒を作ってみると、3ヶ月経っても全く味の変化が見られなくなりました。
ここまで来て、また新たな課題が浮上しました。
それは価格です。ここまでやると価格的に商品化が難しくなり、またまたどうしようかって事になりました。
とはいっても、ここまで時間と労力を使って作った物を販売しなかったら本当に残念と思い、最終的に、10月~3月の期間限定生産で10本単位で販売するこになりました。
もし興味のある方は、ホームページなど見て頂けたらと思います。
弊社は、こういった感じで新しい商品を生み出して行っています。
食品の開発をやっていれば本当に色々な壁にぶつかり、しかも添加物を使わず商品を作る事の難しさを常に感じています。
うちのようなごく小さな手作りの工房で、こう言った商品を流通させるのは至難の業ですが、それだけに出来た時の喜びも一入です。
これからも様々な商品開発に取り組み、新しい商品を少しでも多くお届けできるよう頑張って行きたいと思います。