稲の成長と草取り
無農薬のお米を作るにあたって、除草剤をやらないので雑草はすぐに生えてきます。
始めは草をとる作業を正直、安易に考えていました。
でも実際にやってみると草取りといえど、とても奥深い大変な作業だなと改めて感じさせられるようになりました。
雑草といっても田んぼによって生えてくる種類はそれぞれ違います。
風によって飛ばされてきたもの、水で流されてきたもの、前年度の種が落ちて生えてきたものいろいろです。
草取りは水面上に出てくる前から始める
田植えをして一週間ほどで、まだ水面上には出てきていない状態から草とりの作業は始まります。
目に見えてから取ると、普通は思うかもしれません。
でも雑草は水面上に顔が出てくる時には、かなり成長しているため根もしっかり張っています。
そうなってからでは草取りの作業は全く変わり、労力もかなりかかってきます。
稲の成長を妨げずに草取り
稲が小さいうちは草取りにも細心の注意がいってきます。
稲もまだしっかりと根をはれていないので、倒れたり沈んだりします。
なので初期の草取りのタイミングは毎日、稲の様子をみながら、まだ見えない雑草の成長を予測し、目視して決めていきます。
初期の草取りは特に気を使うところでもあります。
稲が成長していくと、もちろん雑草も同じように成長していきます。
太くて丈夫な稲の株を育てるには、水の管理であったり気をつけるポイントは沢山あります。
しかし、最終的には人の手で目でみながら、一株一株につく雑草を取ることが必須となってきます。
機械では稲の根元部分に絡みついた草は取ることが出来ません。
放っておくと雑草に栄養をとられ、肝心な稲は太れず黄色の葉のやせた稲になります。
そうするともちろんお米も多く実りません。
草取りの師匠
私が草取りを教わったのは地元のおばさんからです。
昔から自分の家の田んぼの草取りはもちろん、他の人からも頼まれて草取りをするほどのベテランの方でした。
田んぼの中を歩く事は、慣れていなければそれだけで体力が奪われます。
一株一株、株と株のすきま、田んぼの隅々までかがんだ体勢で草を取り続けます。
おばさんは慣れた手つきで簡単に草を取って前進していきます。
そのおばさんが草取りをした後は、なかなか次の草が生えてきません。
それを目の当たりにした私は、おばさんに草取りのコツを教えてもらいました。
私はそのコツになるほど...と感心させられました。
始めは見よう見まねで同じ様にしていたのですが、後ろを振り返ると何かがちがいます。
よくよく手つきを見ていると、おばさんは両手を使い株と株とのすきまは、自分の手を三つ鍬のように田んぼの泥の中に突っ込み、まるで耕すかのような手つきで草を引き上げていました。
株に絡みついた草の場合は、株の根元に深く強く両手の指を髪をとかすかの様に上からほぐしていました。
見ていても水面下でしている作業ですのでもちろん見えません。
私は手を取ってもらい、丁寧にそうする事の意味を説明してもらいながら作業しました。
株のすきまに埋もれている雑草は、どうしても残しがちになります。
草を引きちぎってもまたすぐに成長してきます。
稲の根元に絡みついている草こそ、確実に取り除かなくてはなりません。
言うとおりにほぐしながらかき上げてくると、雑草が気持ちよく根っこからとれてきます。
慣れていない人はやはり稲がぐらついたり、抜けたりする事を恐れてそこまで手を入れる事をしません。
でもおばさん曰く「稲がぐらつく位、稲の株の根元部分をほぐしてやる事が大切、根っこに指を入れてしっかりほぐす事で絡まっている草もきれいにとれるから。そして怖がらなくても大丈夫、稲がぐらついても一度ほぐす事、雑草を取り除くことでその後は以前よりもしっかり根をはってくれるから。ぐらつく位が丁度いい!太くてしっかりした株に成長するんだよ。」と。
稲の気持ちになって草取り!
私はそれを教わり、稲の気持ちになってこその発想だなと感じ、大切な事だと思い、それから教わったことを初めて草取りをする人にはもちろん、伝えていくようにしています。
草取りを終えた田んぼは、黄色がかった稲は深く濃い緑に。
株はみるみるうちに太く背が伸び、生き生きしておいしいお米をつける準備に入ります。
そのためには欠かせない草取りの作業です。