老いも若きも9号|猿の被害と対策
最近、田や畑を荒し廻る動物が多くなりました。
猿や猪は田んぼの稲まで食べに里に出てくるのです。
いたし方なく家のまわりの田畑に電さくを張り回らせ対策をして今年は竹の子を守ることが出来ましたし、稲もやられませんでした。
山の動物が里へ下りてきて人間が栽培した作物を食べる被害ということは、どういうことなのでしょうか。
山の食べ物がなくなっている
よほど山に食べ物が少ないとみえます。
腹をすかせてあちらこちらの作物を荒す被害がでています。
汗水流して作ったものをやられるのは辛いけど、でも私は何か自然のサイクルが狂ってきたようにも思えてならないのです。
栗の木にさるがついたのには参りました。
瀬戸山に自家用として五十本の栗の木を栽培しています。植えて三十年くらいになるので、おいしい栗の実が毎年二石は収穫出来ていました。
ゆでたり、栗御飯にしたり、渋皮煮にしたり、従業員さんのおやつにしたり、進物用に使ったり、随分利用価値があったものです。
その栗の木におととしから猿が目をつけたのです。
その年の対策は山に犬をつないだら猿がおどろいて逃げてしまって、栗の実は助かりました。
猟犬ですから猿の姿を見つけると激しく吠えたてるので猿にとって、それはそれは怖かったことでしょう。
驚きの猿の能力
ところが昨年は猿が犬に驚かなくなったのです。
針金を引っ張ってこの間は自由に犬が動けるようにしてあるので、始めの年は追っかけてくると思って逃げてしまったのでしょう。
でもよく観察してみると、行動半径が限られていることが分かったのでしょうか、犬の鎖の届かないところまでは猿が来るようになったのです。
そうなると可愛そうなのは犬です。
獲物が目の前に居るものですから気も狂わんばかりに吠えて声がかれてしまうほどでした。
それに猪も加わりまして、犬も大変でした。
猿や猪の出没が続きますと犬の感覚も麻痺してくるのでしょうか。
それとも我が身の安全を考えるようになるのでしょうか。
そのうちに猿や猪に慣れてしまって犬が吠えなくなってしまったのです。
というわけで、犬も仕事をしてくれなくなったので今年は電さくをはりめぐらせました。
けれども山に電さくは効果がありませんでした。
人間の想像を超えた猿の身軽さと猿の知恵、集団の結束の固さ、紙面の関係で詳しくは書くことは出来ませんが特に猿に関してはお手上げの状態です。
そこで夫が言いますのに山に栗を植える方が間違っていた、栗の木は家の廻りに植えようということになって折角ここまで育て手入れをした栗の木を切り伐すことになりました。
平成8年10月発行
寒川 殖夫・賀代