老いも若きも5号|安全な農業を目指して
食は命なりとつくづく思い、安全な農業を通じて安心できる食生活を目指しています。
むらさき色で淀んでいた顔色が冴えてきて、綺麗になっていくのもうれしいことでした。
歯茎もピンク色に輝いてグラグラしていた歯もピシッとしてきて固いものも咬めるようになってきて夢のようでした。
私は生まれつき歯が弱くて、人並みに固いものは嚙めないとあきらめていたのでした。
父は五十才前に歯槽膿漏で総入歯にしましたが、私は中学の頃から歯がゆるんでやわらかいものしか食べられませんでしたから、三十才位まで歯が持つのかしらと心配していましたが、食事を変えることによってこんなに体質が変わるなんてなんと素晴らしいことでしょう。
食生活が運命を左右する
今私は、安全な食生活こそ人の運命を司っていると断言することが出来ます。
そして、私の夢の夢であり、実現はおそらく不可能と思われますが、夢を語らせて頂ければ龍神梅の事業を後継者に譲ったあかつきには、この龍神村の大自然の中にサナラントのような施設を作りたいと思います。
そして大自然の中で働くことの楽しさや、日本の伝統食の大切さ、安全な農業を若い人たちに伝えて行きたいと思います。
安全な農業を目指して
私は安全な農業を目指して、ヨモギやすぎな・どくだみ・くまざさ等と黒砂糖などで作ったパウダーを野菜にかけています。そうすると野菜はとても喜びます。
万が一作物に病気や虫が出ることがあっても、そんな手づくりのパウダーをかけることによって美味しくて安全な野菜作りが出来るわけですが、そんなパウダーをみんなと一緒に出来たらなあと思います。
このパウダーはそのほかニンニクやトウガラシと焼酎等、工夫次第でいろいろと出来ます。
去年は一斗五升ほどの植物性パウダーを作りました。それらは三〇〇倍から千倍の割合に水で薄めますから、そのほとんどが使用せずに残ってありますが、今年もまたよもぎ、すぎな、せり等をつみました。
それらのエキスを調合して作物にかける時どんな味がするのかな、と味見が出来るのも純植物性エキスの楽しさでしょう。
昔の人は「百姓百品と言って百姓は何でも作らなあかんねで」と言いましたが、「百姓は作物を百品栽培するだけではなく、石垣つみでも、土方でも、簡単な大工でも作業の面でも自給自足の生活が出来なあかんねで」とは夫の言葉です。
しその栽培
しそは在来種で昔から実生えで龍神で栽培されていたものを作っています。
ちょうど梅干づくりを始めた時から栽培しているのですから、もうかれこれ一八年位になるでしょうか。
始めは何の苦労もありませんでした。
しそって自然に生えてきて夏の日天に大きな葉をゆさゆさとひろげて風になびいているという印象しかありませんでしたから、しその栽培に苦労するなんて思ってもみませんでした。
けれども実生えだけではもちろん足りませんから畑にまいて栽培します。
栽培を始めて何年位してからでしょうか。よとう虫にやられるようになりました。
それも始の内は例の夜出てきて圣を食いちぎる黒くて丸くて不気味なあいつだったのです。
そいつは単独行動ですから、朝きのう迄元気ですくすく育っていたしそが突然プッツリと折れてしその葉がしおれてしまっているのですから、一目でヨトウ虫の悪行がわかります。
そこでしその周りをそろりそろりと掘ってみたらコロンと丸々と太った例のあいつが転がり出るのでした。
そこで「ごめん!!」といって心の中で詫びながら、それでもしそをやられた憎さを込めて足で力いっぱい踏んづけるのでした。
それがいつ頃からでしょうか、きれいに筋に生えているしその苗が片っ端から消えていくという不思議な現象が起こったのでした。
平成8年5月発行
寒川 殖夫・賀代